エストニアはもうすぐクリスマスを迎えます。(もちろん日本も迎えます) 夏が終わったかと思ったら、一瞬のうちに日の長さが逆転して、長く冷たい冬が始まりました。僕はというと、9月のはじめに新しい研究室での生活をスタートさせました。
新しい研究室では、日本とエストニアのAI規制・戦略についてのリサーチを行っています。電子国家に関係がないじゃないかと思われるかも知れませんが、テクノロジーは使われなければ意味がないというのが大事な点で、新しい技術に対して国家がとる対策や政策を学ぶことは、非常に意味のあるリサーチであるということです。
リサーチをするうちに気づいてきたことがあります。まず、素人丸出しの法律分野に於いて、バックグラウンドが違うと格段に難しくなるということ。要求されるコンテクストが違ってきますから、慣れるまでに時間がかかりました。次に、行政の開示する情報は思った以上に複雑で煩雑だということ。行政は透明であるべきですが、情報を開示していても、必要な情報に適切にアクセスできる可用性は見直していかなければいけません。情報の海から必要なものを取り出して利用可能にする、この作業をしていくうちに頭の中はどんどんクリアになり、コンテクストが読めるようになりました。
最終的にはスライドにまとめ、タリン工科大学のLaw Schoolで発表する予定です。また、ある日本企業も12月中頃に来るそうで、そこでもエストニアの現状をお話しする予定です。
また、インターン外でも濃い経験を沢山させて貰いました。ノリと勢いで応募してしまったタリンマラソン、練習をしなくても42.195km完走できると風の噂で聞いたのでその通りにしました。当日は地獄を見ました、30kmを超えたあたりからくる辛さは一生忘れません(もう忘れました)。お陰様で暖かい声援もあって完走することが出来ました。
3ヶ月にわたるビジネスコンテストStarterTallinnにも参加しました。パキスタンからの友人のアイデアに惹かれ、チームを組んで開発を行いました。RaQam e-Walletは指紋を使った決済システムです。統率の取れない個性が喧嘩するチームでしたが、一旦は優勝することが出来ました。ネガティブな事を多く学びました、反面教師としていきます。
また、かねてより参加したかった欧州最大のテックカンファレンスであるSLUSHにボランティアとして参加しました。
2400+のボランティアを有し、僕はSpeed mentoringというチームに属しました。奇跡のようですが、ヘルシンキで出会った人全員が素晴らしい人たちで、エストニアよりフィンランドの方がちょっと好きになってしまいました。SLUSHのもつイベントとしての完成度も学びがありました。チーム一つマネジメントするのに戸惑ったStarterTallinnより遥かに大きな規模でのボランティア、大半は学生です。SLUSHの組織としての仕組みづくりに驚かされました。
その頃から徐々に「組織」や「仕組み」に興味が湧いてきました。タイミングよく、ブロックチェーンでのDAO(自立分散型組織)によるプロジェクトベースの新しい組織を作っている若い日本のベンチャーさんから声を掛けていただきました。ヨーロッパ進出のお手伝いと言う形になるのかどうかは分かりませんが、これから関わっていこうと考えています。
また、実はエストニアの暗さにやられて若干鬱気味でした。一時期4つのプロジェクトを同時に行っており、精神的に持ちそうになかったので、一旦断捨離と言う形で今までリモートでインターンをしていた日本のブロックチェーン企業の仕事を休憩することにしました。ビジコンもSLUSHも終わり(現在はSLUSHのおかげですっかり元気です)、自分の時間が取れているのでちゃんと勉強と、新しいプロジェクトにコミットしていけたらと考えています。
情報電子工学科5年 城代拓哉